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相続放棄の3ヶ月熟慮期間の伸長

3ヶ月では間に合わない?!

『相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、放棄をしなければならない。(民法915条)』

民法のとおり、相続放棄は相続の開始があったことを知った時から原則3ヶ月以内にしなければなりません。この3ヶ月を熟慮期間といい、相続するか否かを考えなくてはいけません。被相続人が死亡した後は、葬儀、四十九日など慌ただしいものです。

その後ようやく相続についての財産の調査にかかり、プラスの財産がどのくらい、マイナスの財産がどのくらいと、明らかにしなければいけません。

その結果、相続放棄をするのであればそれに向けて準備を進めていきます。

財産が多く、権利関係が複雑であったりした場合には、3ヶ月という期間はあっという間に過ぎてしまいます。

そのため、原則では3ヶ月と期間が定められていますが、この間に財産の調査が終わりそうにもない場合には、家庭裁判所へ期間の伸長を求めることが可能です。(関連記事:故人の債務・借金の調査方法

熟慮期間(3ヶ月)の伸長手続きについて

熟慮期間の伸長手続きの流れを下記で説明していきます。

◆申立人
・利害関係人(相続人含む)
・検察官

◆申立て期間
自己のために、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内

◆申立て先
被相続人の最後の住所地の家庭裁判所

◆必要な書類
申立人が誰であっても必要な書類
・申立書
・被相続人の住民票除票又は戸籍附票
・利害関係人からの申立ての場合:利害関係を証明する資料(親族の場合、戸籍謄本など)
・伸長を求める相続人の戸籍謄本

申立人が配偶者の場合
・被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍、改正原戸籍)

申立人が子又は代襲相続人の場合(法定相続人第1順位)
・被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍、改正原戸籍)
・申立人が孫などの代襲相続人の場合には、被代襲者の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍、改正原戸籍)

申立人が父母、祖父母(直系尊属)の場合(法定相続人第2順位)
・被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍、改正原戸籍)
・被相続人の子及びその代襲者で死亡している者がいる場合には、その子及び代襲者の出生から死亡まですべての戸籍謄本(除籍、改正原戸籍)
・被相続人の直系尊属に死亡している者がいる場合には、その直系尊属の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍、改正原戸籍)
※相続人より下の代の直系尊属に限る

申立人が兄弟姉妹及びその代襲相続人の場合(法定相続人第3順位)
・被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍、改正原戸籍)
・被相続人の子及びその代襲者で死亡している者がいる場合には、その子及び代襲者の出生から死亡まですべての戸籍謄本(除籍、改正原戸籍)
・被相続人の直系尊属の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍、改正原戸籍)
・申立人が甥や姪などの代襲相続人の場合には、被代襲者の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍、改正原戸籍)

◆必用な費用
・相続人1人につき、収入印紙800円分
・書類郵送用の郵便切手(申立先の家庭裁判所によって若干違います)

熟慮期間の伸長の判断について

「期間の伸長の申立を審理するに当たっては、相続財産の構成の複雑性、所在地、相続人の海外や遠隔地所在の状況のみならず、相続財産の積極、消極財産の存在、限定承認をするについての共同相続人全員の協議期間並びに財産目録の調製期間などを考慮して審理するを要するものと解するのが相当である」
※一部抜粋

熟慮期間の伸長は、どのような基準で判断されているのでしょうか。

上記は過去の判例になりますが、このような部分を考慮して家庭裁判所は熟慮期間の伸長について判断しているようです。

また熟慮期間の延長は、各相続人個別に認められるものであり、相続人の1人が延長を認められたからと言って、他の相続人の熟慮期間に影響しません。

相続人が複数名いる場合には、各相続人ごとに別々に3ヶ月の熟慮期間が進行しますので、熟慮期間延長の申立ては、相続人それぞれがおこなう必要があります。

この決定までにおよそ1週間から2週間ほどを要します。

ですから、3ヶ月の熟慮期間が終了する直前などに申立てをするのはなるべく避け、余裕をもって申立ての準備をおこないましょう。

(熟慮期間の伸長の件数は年々増加傾向にあり、平成27年度の司法統計によると7,399件となっています。)

 

熟慮期間の伸長はどのくらいの期間認められるのか

どのくらい伸ばせるかの規定はありませんが、一般的には1ヶ月から3ヶ月ほどの期間延長が認められるケースが多いようです。

また、家庭裁判所が必要と判断すれば、複数回の期間の伸長が認められる場合もあります。

※伸長が認められない場合もあります。

熟慮期間の伸長が認められないことはあるのか

3ヶ月の熟慮期間はあるが、単に仕事が多忙のため相続財産の調査をすることができないという理由では、恐らく熟慮期間の伸長は認められないでしょう。

相続財産が多い、相続財産の構成が複雑、などの理由で調査が非常に困難であるという客観的理由や、あとどのくらい時間があれば調査ができるなどを丁寧に述べることが重要になってきます。3ヶ月の熟慮期間はあるが、単に多忙のため相続財産の調査をすることができないという理由では、恐らく熟慮期間の伸長は認められないでしょう。

相続財産が多い、相続財産の構成が複雑、などの理由で調査が非常に困難であるという客観的理由や、あとどのくらい時間があれば調査ができるなどを丁寧に述べることが重要になってきます。

できることなら熟慮期間内に相続放棄をする

ここまで相続放棄の熟慮期間3ヶ月の伸長について解説してきました。
この伸長手続きは、実のところを言うと、ほとんど相続放棄をする場合の手続きと変わりはありません。むしろ、熟慮期間伸長の方が、事情等によって結論が異なるため、難しい手続きと言えるかもしれません。
できることなら、なるべく早い準備を行い、死亡日から3ヶ月以内に相続放棄の申述を行えるような段取りで進めることをお勧めします。

もし、3ヶ月が経過してしまった場合には、絶対に相続放棄ができなくなるわけではありません。実は、3ヶ月の熟慮期間経過後に申述される方も少なくありません。
ただし、3ヶ月経過後に相続放棄をする場合にはある程度の経験・知識が必要となってきますので、注意が必要です。
3ヶ月経過後の相続放棄については、以下のページが参考になると思います。
3ヶ月経過後の相続放棄は認められないのか 


この記事の監修者

司法書士・行政書士法人よしだ法務事務所 代表 吉田隼哉

開業当初より、相続の分野を専門として業務を行う。
得意分野は「不動産を含む相続手続き」。テレビ「NHKクローズアップ現代」や雑誌プレジデント・AERA等の執筆、メディア実績多数。情報番組での空き家問題の取材実績あり。


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23.借金(債務)は必ず相続するのか
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25.病院代等の医療費の支払い義務は相続するのか
26.葬儀費用は相続するのか
27.単純承認とは
28.限定承認とは
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36.生前でも相続放棄できるのか
37.死亡届の提出
38.準確定申告とは
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40.海外の相続人がいる場合の遺産分割

41.相続関係から離脱するためには
42.自筆証書遺言とは
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44.公正証書遺言とは
45.家庭裁判所での遺言書の検認手続き
46.自筆証書遺言と公正証書遺言の比較
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48.特別受益とは
49.換価分割とは
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司法書士・行政書士 吉田隼哉

・司法書士よしだ法務事務所 代表
​・行政書士法人よしだ法務事務所 代表
・NPO法人よこはま相続センター 理事
・一般社団法人相続の窓口 事務長

「開業当初より相続分野に積極的に取り組んでおります。遺産承継業務や遺言執行といった財産管理を得意としております。相続のことならお任せください!」
【保有国家資格】
司法書士、簡易訴訟代理権認定、行政書士、ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引主任者、他多数

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