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相続では、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するとあります。(民法896条)
そのうえで、3ヵ月の熟慮期間内に相続の方法を決定しなければなりません。
単純承認とは、相続の方法のひとつであり、プラスの財産もマイナスの財産もすべてを承継する相続方法のことをいいます。
どういった行為が単純承認とみなされ相続放棄ができなくなるのでしょうか。(関連記事:相続放棄とは)
単純承認について民法では以下のように定義しています。
民法921条
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りではない。
(1)相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
(2)相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りではない。
例にあげると、以下のような事例が単純承認をしたとみなされ相続放棄ができなくなる可能性があります。
◇被相続人に借金があり、その借金を相続財産から返済した
この場合には、条文1項にある「相続財産の全部又は一部を処分したとき」に該当する恐れがあります。その結果、単純承認をしたとみなされ相続放棄ができなくなる可能性があります。(相続人の財産から返済することは単純承認にはあたらないと判例がでています。)
◇相続人が遺産分割協議をした場合
遺産分割協議は、1項の「相続財産の全部又は一部を処分したとき」に該当すると考えられます。相続人各々が、相続財産があると認識して権利を処分するからです。
ですから、単純承認をしたものとみなされ相続放棄ができなくなる可能性があります。
◇相続人が被相続人所有不動産の賃料を請求した場合
これは被相続人の債権取り立てとされ、「相続財産の全部又は一部を処分したとき」に該当すると考えられており、単純承認をしたものとみなされる可能性があります。
◇相続の開始があったことを知った時から何もせず3ヵ月経過した
この場合、2項にある「第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき」に該当します。
第915条第1項とは、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」のことを言っています。
相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に、限定承認か相続放棄をしなければ、自動的に単純承認をしたものとみなされてしまい、以後、原則撤回することはできなくなってしまいます。
◇相続財産を隠した場合
相続人が被相続人の財産を独り占めする目的などで隠した場合には、3項にある「限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、…」に該当します。このような場合には背信的な行為とされ、単純承認したものとみなされます。
被相続人の死亡により相続が発生した場合、家族であれば相続財産にまったく手をつけないというのは今のご時世では現実的には難しいでしょう。
しかし、相続財産の一部を処分した場合には、単純承認をしたものとみなされる可能性があります。よって、相続放棄を検討している場合には注意が必要となります。(関連記事:家庭裁判所への相続放棄の申述方法)
その一方で、葬儀代を相続財産から支出することは社会的見地から不当なものとはいえず、「相続財産の処分」にはならず、単純承認にはあたらないとされています。(関連記事:葬儀代を相続財産から出したら相続放棄できなくなるのか)
このように判断がむずかしい部分がありますので、事前に専門家へのご相談をお勧めいたします。
この記事の監修者
司法書士・行政書士法人よしだ法務事務所 代表 吉田隼哉
開業当初より、相続の分野を専門として業務を行う。
得意分野は「不動産を含む相続手続き」。テレビ「NHKクローズアップ現代」や雑誌プレジデント・AERA等の執筆、メディア実績多数。情報番組での空き家問題の取材実績あり。
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19.セットバックとは
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21.空き家対策特別措置法とは
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23.相続不動産の売却と瑕疵担保責任
24.不動産流通機構(レインズ)とは
25.相続した不動産の共有持分だけ売却できるか
26.4つの土地の評価方法
27.相続した借地上の建物を売却する方法
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29.認知症の相続人がいる場合の相続不動産売却
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22.香典や弔慰金は相続財産となるのか
23.借金(債務)は必ず相続するのか
24.故人の債務・借金の調査方法
25.病院代等の医療費の支払い義務は相続するのか
26.葬儀費用は相続するのか
27.単純承認とは
28.限定承認とは
29.相続放棄とは
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79.包括遺贈と特定遺贈の違い
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86.期限付きの相続手続きまとめ
87.遺産分割協議書と遺産分割証明書の違い
88.公正証書遺言の検索方法・調査
89.法定相続情報証明制度とは
90.法定相続情報証明制度の問題点と今後
91.高齢者消除と相続
92.同時に死亡した場合の相続関係
93.準正とは
94.再転相続とは
95.相続財産管理人とは
96.遺留分減殺請求権の行使
97.戸籍と住民票の保管期限
98.相続分の譲渡とは
99.いらない土地を相続放棄できるか
≫実家を亡父親から母親名義に変更する相続登記
≫亡くなった母親から長女へ名義変更をする
≫公正証書遺言が残されていた場合の相続登記
≫5年前に亡くなった父親の相続登記
≫亡くなった兄から名義変更する相続登記
≫田舎にある実家の相続登記
≫父親が残した自筆証書遺言での相続登記
≫亡くなった叔父の自宅の相続登記
≫未成年者が相続人にいるケースの相続登記
≫地主だった父親名義の不動産を相続登記
≫相続した未登記建物の名義変更
≫代位による相続登記後に遺産分割した相続登記
≫母親と父親が順に亡くなった場合の相続登記
≫一部の相続人が相続放棄した場合の相続登記
≫相続した対象不動産がよくわからない相続登記
≫家裁で検認した遺言書を使わずに相続登記
≫売却の前提としての相続登記
≫登記済権利証が見つからない場合の相続登記
≫自宅と原野の相続登記
≫孤独死で亡くなった叔父の自宅を相続登記
1.父親名義の実家を母親に変更したい
2.亡くなった母名義のマンションを名義変更したい
3.父から相続した二世帯住宅の名義変更をしたい
4.単独相続した母親のマンションを名義変更
5.兄から相続した遠方の不動産を名義変更したい
6.父と母が順に亡くなった場合の不動産名義変更
7.叔母から代襲相続したマンションの名義変更
8.父がのこした公正証書遺言での不動産名義変更
9.実家と別荘の不動産名義変更をしたい
10.上物(建物)は自分名義のため土地のみ名義変更
11.権利証を紛失した不動産の名義変更
12.売却の前提として至急の不動産名義変更
13.未成年者がいる場合の相続した不動産名義変更
14.相続税申告が絡む不動産名義変更
15.相続人が12人いる場合の不動産名義変更
16.相続人の1人が相続放棄した後の不動産名義変更
17.遺贈により相続人以外が取得したマンションの名義変更
18.対象不動産が不明な場合の相続登記
19.一筆の土地を分けて兄弟がそれぞれ相続する事例
20.複数ある不動産を遺産分割で相続人が分けて名義変更
1.兄弟で相続した不動産を売却して代金を分けたい
2.父親が他界したので実家を売却して姉妹で分割したい
3.兄弟3人が相続した実家を換価分割する
4.遠方の相続人がいる場合に実家を換価分割したい
5.空き家の3000万円控除を使って売却する
6.事故物件となったマンションを売却したい
7.税金滞納で差し押さえられた相続不動産を売却したい
8.相続した地方の実家を換価分割したい
9.相続人が多数いる場合に換価分割するケース
10.スムーズに相続した実家を換価分割したい
11.相続した定期借地上の建物を売却して解決した事例
12.相続した不要な土地と自宅をまとめて売却
13.入居者がいる相続したアパートを売却して換価分割
14.月極駐車場で貸している土地を換価分割
15.自殺があった相続不動産を売却して換価分割
16.不仲な姉妹共有の相続不動産を売却
17.相続放棄を検討していた家を売却
18.孤独死があった家を相続して売却換価
19.公正証書遺言の内容に従って換価分割
20.平等に姉妹で相続した不動産を売却して分割
・司法書士よしだ法務事務所 代表
・行政書士法人よしだ法務事務所 代表
・NPO法人よこはま相続センター 理事
・一般社団法人相続の窓口 事務長
「開業当初より相続分野に積極的に取り組んでおります。遺産承継業務や遺言執行といった財産管理を得意としております。相続のことならお任せください!」
【保有国家資格】
司法書士、簡易訴訟代理権認定、行政書士、ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引主任者、他多数
神奈川・東京・千葉・埼玉を基本エリアとして日本全国の相続不動産に対応
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