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相続が発生したこと原因として不動産の名義変更をする場合、大半の場合が遺産分割協議を相続人全員で行い、その協議の内容に従って相続登記をします。
しかし、被相続人が生前に作成した遺言書が残されていた場合には、原則として遺言の内容に従って相続登記をすることになります。
ここでは、遺言書が残されていた場合に、どういった手続き方法になるのか、自筆証書と公正証書の場合ではどのような手続きに違いが出てくるのかを解説します。(関連記事:自筆証書遺言と公正証書遺言の比較)
遺言者(被相続人)が残した自筆証書遺言(自筆の遺言書)があった場合には、相続登記の手続きをする前に、まず家庭裁判所で検認を受けて、その遺言書を有効にしなければなりません。(関連記事:遺言の検認とは)
家庭裁判所の検認を受けることで、検認日における遺言書の形状、加除訂正、日付、署名などをはっきりさせて、遺言書の偽造、変造を防止します。
※公正証書遺言の場合には検認手続は不要です。公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成をして保管をしているため安心確実であり偽造、変造の危険性がないためです。
家庭裁判所の検認手続に必要なものは以下のとおりです。
◆必要書類
・検認の申立書
・遺言者(被相続人)の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
・遺言者(被相続人)の住民票除票または戸籍の附票
・相続人全員の戸籍謄本
※遺言者の子で死亡しているものがいる場合、相続人に第2順位の相続人である父母・祖父母がいる場合、遺言者の兄弟姉妹および甥・姪または第2順位、第3順位の相続人がすべて死亡していて相続人が配偶者のみの場合には、必要に応じて別途追加の書類の提出が必要な場合があります。
・相続人の住民票
◆費用
・遺言書1通につき800円分の収入印紙
・連絡用の郵便切手
・検認済証明書発行費用として150円分の収入印紙
◆申立先
・遺言者(被相続人)の最後の住所地の家庭裁判所
申立て後、家庭裁判所から相続人全員に対して、検認を行う期日の日時、場所が通知されます。検認期日には、相続人立会いのもと手続きが行われます。
(相続人全員が出席しなくても、検認手続は完了します。)
無事検認手続が完了すると、申請をすることで検認済証明書が発行されます。
家庭裁判所に申立をしてから、おおむね1か月ほどの日数を要します。
遺言書の検認が完了したら次は相続登記の手続きに移ります。
遺言による相続登記に必要なものは以下のとおりです。
◆必要書類
・登記申請書
・登録免許税納付用台紙
・遺言書(自筆証書遺言の場合は検認済みのもの)
・被相続人の死亡のある戸籍謄本(または除籍謄本)
・被相続人の除票(または戸籍の附票)
・相続人の戸籍謄本
・相続人の住民票(または戸籍の附票)
・固定資産評価証明書(相続登記を出す年度のもの)
・委任状(司法書士などの代理人に依頼する場合には必要)
※「被相続人の戸籍謄本」は、法定相続による相続登記などの場合では、「出生から死亡までの全て」を用意する必要があります。つまり、現在のものだけでなく、過去の除籍謄本や改製原戸籍まで集めなければいけません。(関連記事:除籍謄本と改製原戸籍)その点、遺言による相続登記の場合には、集める戸籍謄本が少なくて済みます。
◆費用
・登録免許税:不動産評価額の1000分の4
※計算した金額の100円未満については切り捨てとなります。また、金額が1,000円に満たない場合には、1,000円になります。(最低額1000円)
・依頼料:司法書士などの専門家へ依頼する場合には、その費用
◆申請先
・不動産の所在地を管轄する法務局
不動産が全国各地にあり、相続登記をする法務局の管轄がそれぞれ異なる場合には、それぞれの法務局で相続登記をすることになります。
※被相続人の住所地ではありません。(一致している場合もあります。)
申請後、法務局でおよそ1週間~2週間ほどの審査期間を経て、問題がなければ登記は完了となります。毎年3月~5月にかけては、不動産登記の申請件数が多く、完了日が通常の目安よりも遅くなるケースがあります。
申請人当事者または代理人が法務局の窓口に出向いて申請しますが、郵送による申請も可能です。郵送の場合には、登記申請書などの書類が法務局に届いてから受付されるため、窓口での申請よりも登記の完了までには時間がかかってしまします。
また、紛失などの事故の危険性もありますので、できることなら法務局の窓口に出向いて申請したほうがよいでしょう。窓口での申請であれば、あらかじめ相談窓口で分からないことを質問することも可能です。
その他にも、オンラインで申請をすることも可能です。
ただし、オンライン申請の場合には、各種ソフトのダウンロードや電子署名できる環境にあることが必要となります。(関連記事:登記申請の3つの方法(書面・郵送・オンライン))
人生で何度も相続登記をするようなことは普通はないでしょうから、機器を取りそろえることや準備期間を考えると、やはり窓口での申請の方が早くて簡単ということになります。
そして登記が完了すると、「登記識別情報通知」が発行されます。これは不動産の所有者である証となる重要なものです。相続人が複数の場合には、相続人ごとに発行されます。(関連記事:登記済権利証と登記識別情報の違い)
自筆証書遺言と公正証書遺言の大きな違いは検認手続きを経る必要があるか否かです。
前述したように、検認は家庭裁判所で行う必要があり、申し立てから呼び出し期日の指定などを考えると最低でも1ヶ月の時間がかかってしまいます。また、検認手続きでは、相続人全員に呼び出し通知がなされ、相続人全員の前で開封が行われるので、感情的なもつれが生じる恐れがあります。対して、公正証書で作成した遺言であれば、手元にある遺言書をそのまま相続登記に使用することが可能なため、相続人間の争いを回避することができます。
さらに、遺言書が公正証書の場合には検認手続きを経る必要がないため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集める必要がなく、手続きが非常に容易です(検認の際に出生から死亡の戸籍謄本を提出しなければいけないため自筆証書遺言の場合は必然的に戸籍謄本を集める必要がでてくる)。
このように遺言書が公正証書遺言の場合だと、用意する書類も少なく遺言書の検認手続も不要であるため、相続登記手続きの準備期間が短くなります。
遺産の調査なども生前に遺言者が行ったうえで遺言書を作成していることがほとんどでしょうから、準備の手間、時間が大幅に短縮されることが一般的です。
公正証書で遺言を作成するためには公証役場での手続きが必要になります。
遺言を公正証書で作成すると、遺言の原本が公証役場で保管され、正本と謄本の2部が遺言者へ交付されます。(つまり合計3部作成されることになる)
正本と謄本は大きな違いこそありませんが、実務上は謄本よりも正本の方が効力が強く、遺言執行をする場合には正本で行うこととされています。
しかし、正本と謄本は全く同じ内容が書かれていますから、相続登記に使用する遺言は正本ではなく謄本でも問題ないように思います。
このことについて結論をいえば、正本ではなく謄本の公正証書遺言を添付して相続登記申請をしても受理されるものと思われます。内容は全く同じであって、謄本でも十分にその遺言の内容が確認できるからです。
ただし、謄本での公正証書遺言の受理について明確な定めがあるわけではありませんので、謄本での公正証書遺言の受理不受理については法務局によって取り扱いが異なる可能性がありますから、念のため相続登記の前に事前に法務局へ相談をされた方が無難だと思います。(当事務所では何度か公正証書遺言を謄本で提出していますが全て受理されています)
前述したように公正証書で遺言を作成すると正本と謄本が公証役場より発行されます。しかし、相続登記前に両方とも紛失してしまったら相続登記ができなくなってしまうのでしょうか。
これについては、遺言者本人が作成した公証役場に行けば謄本を再発行してもらうことができます。謄本であったとしても相続登記に使用して受理されるはずですので、再発行をした謄本を使用して相続登記をすれば問題ありません。
なお、遺言者がどこの公証役場で遺言を作成したかすらわからない場合も想定されます。その場合には、どこの公証役場でも構いませんので一度出向いて、遺言検索システムを利用します。その検索システムを使えば、平成元年以降に作成された遺言であればどこの公証役場で作成されたものなのか調べることができますので、そこから直接その公証役場へ出向けばいいわけです。
なお、話は変わりますが、遺言があったとしても相続人全員(相続人以外の受遺者がいる場合は受遺者も含めて)で遺産分割をすることが可能です。公正証書遺言では再発行すればいいですが、自筆証書遺言を紛失した場合には、再発行は不可能です。もし、見つからないのであれば、遺産分割の方法で相続手続きを乗り切る方法もありますので、検討してみてください。(関連記事:遺言があっても遺産分割できるのか)
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この記事の監修者
司法書士・行政書士法人よしだ法務事務所 代表 吉田隼哉
開業当初より、相続の分野を専門として業務を行う。
得意分野は「不動産を含む相続手続き」。テレビ「NHKクローズアップ現代」や雑誌プレジデント・AERA等の執筆、メディア実績多数。情報番組での空き家問題の取材実績あり。
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49.権利証が見つからない場合の不動産名義変更
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51.登記の取下げ・却下とは
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56.相続登記(不動産名義変更)とは
1.相続した不動産を売却する流れ
2.相続した不動産の換価分割とは
3.相続不動産の売却の前提として相続登記が必要
4.相続不動産の売却にかかる経費まとめ
5.譲渡所得税とみなし取得費
6.物件の調査と相場の調べ方
7.住宅ローンが残っていても相続不動産は売れるのか
8.3つの媒介契約とは(一般・専任・専属専任)
9.相続不動産の売却先にするべきは個人か買取業者か
10.不動産売買契約書に貼付する収入印紙額一覧
11.相続した土地の売却に必要な測量
12.遺品整理業者とは
13.遠方の相続不動産を売却する場合の注意点
14.相続をきっかけとする空き家問題
15.相続した戸建てを売る場合の注意点
16.相続したマンションを売る場合の注意点
17.再建築不可物件とは
18.事故物件(心理的瑕疵物件)とは
19.セットバックとは
20.建物解体業者の選び方と相場
21.空き家対策特別措置法とは
22.空き家の譲渡所得税3000万円特別控除
23.相続不動産の売却と瑕疵担保責任
24.不動産流通機構(レインズ)とは
25.相続した不動産の共有持分だけ売却できるか
26.4つの土地の評価方法
27.相続した借地上の建物を売却する方法
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9.行方不明の相続人がいるケースの遺産分割
10.認知症の相続人がいるケースの遺産分割
11.相続人の中に未成年者がいるケースの相続まとめ
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13.相続欠格とは
14.相続人廃除とは
15.戸籍謄本とは
16.遠方の戸籍謄本の取り寄せ方法
17.相続財産に含まれるもの
18.生命保険金は相続税の課税対象か
19.死亡退職金は相続税の課税対象か
20.相続開始後のアパート賃料は遺産分割の対象か
21.名義預金と相続税について
22.香典や弔慰金は相続財産となるのか
23.借金(債務)は必ず相続するのか
24.故人の債務・借金の調査方法
25.病院代等の医療費の支払い義務は相続するのか
26.葬儀費用は相続するのか
27.単純承認とは
28.限定承認とは
29.相続放棄とは
30.家庭裁判所への相続放棄の申述方法
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32.3ヶ月経過後の相続放棄
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44.公正証書遺言とは
45.家庭裁判所での遺言書の検認手続き
46.自筆証書遺言と公正証書遺言の比較
47.遺言があっても遺産分割できるのか
48.特別受益とは
49.換価分割とは
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73.遺贈寄付とは
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75.相続時精算課税制度とは
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77.遺産分割を放置するデメリット
78.遺産分割調停とは
79.包括遺贈と特定遺贈の違い
80.遺贈と死因贈与の違い
81.除籍謄本と改製原戸籍
82.資格者による戸籍謄本等の職権取得
83.疎遠な相続人との遺産分割
84.成年後見制度とは
85.相続した預貯金口座の調べ方
86.期限付きの相続手続きまとめ
87.遺産分割協議書と遺産分割証明書の違い
88.公正証書遺言の検索方法・調査
89.法定相続情報証明制度とは
90.法定相続情報証明制度の問題点と今後
91.高齢者消除と相続
92.同時に死亡した場合の相続関係
93.準正とは
94.再転相続とは
95.相続財産管理人とは
96.遺留分減殺請求権の行使
97.戸籍と住民票の保管期限
98.相続分の譲渡とは
99.いらない土地を相続放棄できるか
≫実家を亡父親から母親名義に変更する相続登記
≫亡くなった母親から長女へ名義変更をする
≫公正証書遺言が残されていた場合の相続登記
≫5年前に亡くなった父親の相続登記
≫亡くなった兄から名義変更する相続登記
≫田舎にある実家の相続登記
≫父親が残した自筆証書遺言での相続登記
≫亡くなった叔父の自宅の相続登記
≫未成年者が相続人にいるケースの相続登記
≫地主だった父親名義の不動産を相続登記
≫相続した未登記建物の名義変更
≫代位による相続登記後に遺産分割した相続登記
≫母親と父親が順に亡くなった場合の相続登記
≫一部の相続人が相続放棄した場合の相続登記
≫相続した対象不動産がよくわからない相続登記
≫家裁で検認した遺言書を使わずに相続登記
≫売却の前提としての相続登記
≫登記済権利証が見つからない場合の相続登記
≫自宅と原野の相続登記
≫孤独死で亡くなった叔父の自宅を相続登記
1.父親名義の実家を母親に変更したい
2.亡くなった母名義のマンションを名義変更したい
3.父から相続した二世帯住宅の名義変更をしたい
4.単独相続した母親のマンションを名義変更
5.兄から相続した遠方の不動産を名義変更したい
6.父と母が順に亡くなった場合の不動産名義変更
7.叔母から代襲相続したマンションの名義変更
8.父がのこした公正証書遺言での不動産名義変更
9.実家と別荘の不動産名義変更をしたい
10.上物(建物)は自分名義のため土地のみ名義変更
11.権利証を紛失した不動産の名義変更
12.売却の前提として至急の不動産名義変更
13.未成年者がいる場合の相続した不動産名義変更
14.相続税申告が絡む不動産名義変更
15.相続人が12人いる場合の不動産名義変更
16.相続人の1人が相続放棄した後の不動産名義変更
17.遺贈により相続人以外が取得したマンションの名義変更
18.対象不動産が不明な場合の相続登記
19.一筆の土地を分けて兄弟がそれぞれ相続する事例
20.複数ある不動産を遺産分割で相続人が分けて名義変更
1.兄弟で相続した不動産を売却して代金を分けたい
2.父親が他界したので実家を売却して姉妹で分割したい
3.兄弟3人が相続した実家を換価分割する
4.遠方の相続人がいる場合に実家を換価分割したい
5.空き家の3000万円控除を使って売却する
6.事故物件となったマンションを売却したい
7.税金滞納で差し押さえられた相続不動産を売却したい
8.相続した地方の実家を換価分割したい
9.相続人が多数いる場合に換価分割するケース
10.スムーズに相続した実家を換価分割したい
11.相続した定期借地上の建物を売却して解決した事例
12.相続した不要な土地と自宅をまとめて売却
13.入居者がいる相続したアパートを売却して換価分割
14.月極駐車場で貸している土地を換価分割
15.自殺があった相続不動産を売却して換価分割
16.不仲な姉妹共有の相続不動産を売却
17.相続放棄を検討していた家を売却
18.孤独死があった家を相続して売却換価
19.公正証書遺言の内容に従って換価分割
20.平等に姉妹で相続した不動産を売却して分割
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