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遺言により土地を相続人と相続人以外へ相続した場合の不動産名義変更

遺贈登記と相続登記が重なる名義変更

遺言を書くことで自分の好きな人に不動産をあげることができます。もちろん相続人だけでなく、相続人以外にあげることも可能です。
ただし、相続人と相続人以外では、登記の種類が異なってきます。具体的にいえば、相続人なら相続登記、相続人以外なら遺贈登記となります。
登記の種類が異なるということは手続き上も注意しなければいけない問題点もあります。
ここでは、遺贈登記と相続登記が重なる場合の登記手続きについて解説します。
(関連記事:遺言による相続登記

ある土地を相続人と相続人以外に相続させる旨の遺言があったら

不動産を相続人へ相続させる場合には相続登記となり、不動産を相続人以外へ相続させる場合には遺贈登記となります。これら登記は種類が異なりますので、登記手続き上は全く別の登記で申請しなければいけません。
こういったケースでは、登記先例というものでルールが決まっていますので、そのルールに従って登記をしなければいけません。まずはその登記先例を見てください。
(関連記事:登記先例とは

関連する登記先例

A所有の甲土地について、所有権の一部2分の1をBに遺贈され、残り2分の1をCに相続された場合には、先に遺贈による所有権一部移転登記を申請することを要する。(質疑登研523P139)

この登記先例では何を言いたいかというと、まず最初に遺贈登記を出して、それから相続登記を申請せよと言っています。「要する」と書かれているとおり、最初に相続登記を出してから遺贈登記を申請してしまうと、却下されてしまうことになります。
それでは、具体的な事例をあげながら、登記申請書の見本も示したいと思います。

遺贈登記と相続登記が重なる登記申請書の見本

登記申請書の事例

甲野太郎が生前に「甲土地は、私の妻甲野花子と長男甲野一郎へ各2分の1の割合で相続させる」旨の遺言を残して死亡した。しかし、妻甲野花子は内縁の配偶者であって、戸籍上の妻には該当しない(相続人ではない)。

この事例では、妻甲野花子へ相続させると遺言をしていますが、妻は法定相続人ではありませんので、妻へ名義変更するための登記は遺贈となります。対して、長男は子供なので相続登記を申請することができます。
前述したように、遺贈登記と相続登記が重なる場合には、別の登記申請にしなければいけず、さらに登記先例によって、遺贈登記を申請した後に相続登記を申請しなければいけません。実務上は、これらの登記申請を2連件で行いますので、登記申請書は2つ用意しなければいけません。
それぞれ登記申請書の見本を提供します。

1/2

登  記  申  請  書

 

登記の目的  所有権一部移転

原   因  平成30年1月10日 遺贈

権 利 者  横浜市中区本町三丁目20番1号 持分2分の1 甲野花子

義 務 者  横浜市中区本町三丁目20番1号 亡甲野太郎

添付書類
登記原因証明情報  登記識別情報(又は登記済権利証)  印鑑証明書  住所証明書  代理権限証書  評価証明書  


平成30年3月20日申請 横浜地方法務局 ○○出張所

代 理 人  横浜市南区南町1番地 
      司法書士 法務太郎 
電話番号045-123-4567

課税価格   移転した持分の価格 金543万2,000円

登録免許税  金10万8,600円

不動産の表示

~省略~

 

2/2

登  記  申  請  書

 

登記の目的  甲野太郎持分全部移転

原   因  平成30年1月10日 相続

相 続 人  (被相続人 甲野太郎)
       横浜市西区山下町一丁目2番3号 持分2分の1 甲野一郎

添付書類

登記原因証明情報  住所証明書  代理権限証書  評価証明書  


平成30年3月20日申請 横浜地方法務局 ○○出張所

代 理 人  横浜市南区南町1番地 
      司法書士 法務太郎 
電話番号045-123-4567

課税価格   移転した持分の価格 金543万2,000円

登録免許税  金2万1,700円

不動産の表示

~省略~

 

遺贈登記と相続登記は別申請になるため、登記申請書は2つ必要です。
連件で申請する場合は、実務上登記申請書の右上に分数表記で連件であることをわかるように示します。(2連件の場合には1件目に1/2、2件目に2/2と書きます)
1件目の遺贈登記は相続人以外が承継者のため登録免許税は1000分の20ですが、2件目は相続登記なので1000分の4です。

なぜ同じ相続なのに2つの登記申請書が必要になるのか

上記の遺贈登記と相続登記は、両方とも同じ甲野太郎の遺言に基づき発生した登記です。一見すると、同じ相続を起因しているので、登記申請は1件で済みそうにも思えます。しかし、登記申請上は2つの登記に分けて申請しなければいけません。
これには大きな理由があります。登記申請は一括申請をするための要件が定められているからです。一括申請の要件は以下のとおりです。

不動産登記令第4条(申請情報の作成及び提供)

申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。

この不動産登記令第4条には、一括申請の要件が書かれています。簡単にいえば原則として、各登記申請ごとに申請書を作らなければいけないけど、例外的に要件が揃った場合は一括申請することができるよ、という意味合いです。一括申請が例外的に認められる要件とは、条文の下線に書かれている同一管轄の法務局で、登記の目的と登記原因と日付が同じ場合です。遺贈登記と相続登記では、そもそも登記原因が異なりますし、登記の目的も違うので別申請にするしかないのです。

遺贈登記の登記申請書を先にしなければいけない根拠

遺贈登記を先に出さなければいけない登記先例があるからといえばその通りなのですが、実際はその登記先例よりも根っことなる先例があります。
下記の2つの登記先例をご覧ください。

関連する登記先例

1.共同相続人の一人が、自己の持分についてだけ相続登記を申請することができない。(昭和30.10.15-2216)

2.共同相続人の一人は、共有物の保存行為として、共同相続人全員のために相続登記を申請することができる。(質疑登研157P45)

この2つの登記先例が何を言いたいかというと相続登記は相続人全員分をすべきであって、相続人のうちの一部の人だけについて相続登記をすることができないということです。
つまり、登記先例上の取扱いで相続による所有権一部移転登記を申請することが認められていませんので、順番として所有権一部移転登記ができる遺贈登記を先に出してから持分全部移転登記として相続登記をするしか方法がないからです。

自筆証書で遺言を作ってしまったことで複雑な登記となる

こういった複雑な登記がなぜ必要になるのかというと、自筆証書で遺言を作成してしまったことに大きな原因があります。
公正証書で遺言を作成したものであれば、法律家の関与のもと遺言が作成されますので内縁の配偶者のことを妻として相続させる旨の遺言を書く事はまず考えられませんし、遺贈登記や相続登記の論点を見越してなるべくスムーズな手続きとなる内容にしたはずです。
自筆証書遺言は作成時に簡単なメリットがある反面、実際の手続き段階になって問題が発生することが非常に多いです。
今後は自筆証書で遺言を作成する人が減少し、全ての人が公正証書での遺言を作成するのが当たり前になる時代になることを切に願います。
(関連記事:遺言による相続登記

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・司法書士よしだ法務事務所 代表
​・行政書士法人よしだ法務事務所 代表
・NPO法人よこはま相続センター 理事
・一般社団法人相続の窓口 事務長

「開業当初より相続分野に積極的に取り組んでおります。遺産承継業務や遺言執行といった財産管理を得意としております。相続のことならお任せください!」
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