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改正による旧相続税と新相続税の比較

相続税はどう変わった?!

平成27年1月1日以降の相続から相続税の扱いが大きく変わりました。この改正により、多くの方に影響が出たといわれています。特に、東京・大阪・名古屋・福岡のような大都市部の方々にとってみると、大きな影響があったのではないでしょうか。その理由のひとつとして基礎控除額の引き下げです。

ここでは、我々に一番大きな影響を及ぼす基礎控除額の引き下げなど改正点を網羅的に説明していきます。

1.基礎控除額の引き下げ

今回の改正のもっとも大きな部分としては「基礎控除額の引き下げ」があります。

基礎控除額の改正はおよそ20年ぶりとなっており、まさに大改正と呼ぶに値します。

基礎控除額が引き下げられるということは、その分、相続税の課税対象となる遺産の額が多くなるということです。基礎控除額の計算方法は以下のとおりです。

◆旧相続税

5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)=基礎控除額

◇新相続税(平成27年1月1日~)

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)=基礎控除額

 

法定相続人が4人の場合にどれだけ差が出るのか計算式に当てはめて比較します。

◆旧相続税

5,000万円+(1,000万円×法定相続人4人)=基礎控除額9,000万円

◇新相続税

3,000万円+(600万円×法定相続人4人)=基礎控除額5,400万円

 

例えば、相続した遺産額が8,000万円だった場合、旧相続税の場合には基礎控除額内に収まるため相続税は課税されませんが、新相続税の場合には、遺産額8,000万円から基礎控除額5,400万円を引いた2,600万円が相続税の課税対象となってきます。基礎控除額の差は、3,600万円もあります。このように、改正以前の旧相続税の場合には相続税を納付する必要がなかった人が、新相続税では納付対象になってしまうという部分が、非常に大きな影響を与える部分になっております。

(相続税は、被相続人から相続又は遺贈によって財産を取得した者それぞれの課税価格の合計が、遺産に係る基礎控除額を超える場合には、その財産を取得した者は申告をする必要があります。)

2.税率構造の改正

各法定相続人の取得金額による、最高税率の引き上げなどの税率構造が改正されました。

相続税率と控除額   

法定相続人の取得金額 税率(改正前) 税率(改正後) 控除額
~1,000万円 10% 10%  
1,000万円超~3,000万円以下 15% 15% 50万円
3,000万円超~5,000万円以下 20% 20% 200万円
5,000万円超~1億円以下 30% 30% 700万円
1億円超~2億円以下 40% 40%  1,700万円
2億円超~3億円以下 40% 45%  2,700万円
3億円超~6億円以下 50% 50% 4,200万円
6億円超~   50% 55% 7,200万円

法定相続人の取得金額とは、課税遺産総額(課税価格の合計から遺産に係る基礎控除額を控除した金額)を法定相続人の数に算入された相続人が、法定相続分に応じて取得したものとした場合の各人の取得金額のことをいいます。

 

例えば、法定相続人が配偶者と子2人で、課税価格の合計が2億円の場合の相続税額

2億円-基礎控除額4,800万円=課税遺産総額1億5,200万円

◆配偶者(相続分2分の1)7,600万円×税率30%-控除額700万円=1,580万円

◆子(相続分の4分の1)3,800万円×税率20%-控除額200万円=560万円

配偶者1,580万円+子560万円×2人=2,700万円

この場合の相続税額は2,700万円となります。

3.未成年控除・障害者控除の引き下げ

未成年、障害者の控除額がそれぞれ引き上げられています。(関連記事:相続税の各種控除・特例について

未成年控除

20歳までの1年につき6万円(改正前)⇒20歳までの1年につき10万円(改正後)

例えば、相続人が15歳の場合には、20歳-15歳=5、5×10万円=50万円、

この50万円が未成年控除額となります。

未成年者が成人するまでの間に必要になる教育費等の負担を、税額減税をすることで助けてあげる制度です。

障害者控除

85歳までの1年につき6万円(特別障害者12万円)⇒85歳までの1年につき10万円(特別障害者20万円)

相続発生後の障害者本人の経済面配慮、遺産分割協議時に障害者に不利な分割が発生することを防ぐために設けられています。

4.小規模宅地などの特例

居住用の宅地等の限度面積、居住用と事業用の宅地等を選択する場合の適用面積が拡大されました。(関連記事:相続税の各種控除・特例について

居住用の宅地等(特定居住用宅地等)の限度面積

限度面積240平方メートル(減額割合80%)⇒限度面積330平方メートル(減額割合80%)     

居住用と事業用の宅地等を選択する場合の適用面積

特定居住用宅地等240平方メートル⇒特定居住用宅地等330平方メートル

特定事業用等宅地等400平方メートル⇒特定事業用等宅地等400平方メートル

合計400平方メートルまで適用可能⇒合計730平方メートルまで適用可能

(貸付事業用宅地等について特例の適用を受けない場合に限ります。)

小規模宅地等の特例とは、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等がある場合には、一定の要件の下に、遺産である宅地等のうち限度面積までの部分について、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額します。

相続税の申告方法について

相続税の基礎控除額を超える場合には、相続税申告が必要となります。
相続税を申告する場合には、各種控除を使ってなるべく税額を安くした方がいいに決まっていますので、使える控除や特例は忘れずに適用させるようにしましょう。

相続税の申告方法については、次のページで解説をしていますのでご参照ください。
相続税の申告方法について


この記事の監修者

司法書士・行政書士法人よしだ法務事務所 代表 吉田隼哉

開業当初より、相続の分野を専門として業務を行う。
得意分野は「不動産を含む相続手続き」。テレビ「NHKクローズアップ現代」や雑誌プレジデント・AERA等の執筆、メディア実績多数。情報番組での空き家問題の取材実績あり。


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9.行方不明の相続人がいるケースの遺産分割
10.認知症の相続人がいるケースの遺産分割

11.相続人の中に未成年者がいるケースの相続まとめ
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14.相続人廃除とは
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16.遠方の戸籍謄本の取り寄せ方法
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19.死亡退職金は相続税の課税対象か
20.相続開始後のアパート賃料は遺産分割の対象か

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22.香典や弔慰金は相続財産となるのか
23.借金(債務)は必ず相続するのか
24.故人の債務・借金の調査方法
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26.葬儀費用は相続するのか
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代表司法書士プロフィール

司法書士・行政書士 吉田隼哉

・司法書士よしだ法務事務所 代表
​・行政書士法人よしだ法務事務所 代表
・NPO法人よこはま相続センター 理事
・一般社団法人相続の窓口 事務長

「開業当初より相続分野に積極的に取り組んでおります。遺産承継業務や遺言執行といった財産管理を得意としております。相続のことならお任せください!」
【保有国家資格】
司法書士、簡易訴訟代理権認定、行政書士、ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引主任者、他多数

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