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不動産の名義変更をしたいと考えているお客様へ

不動産の名義変更は簡単なことではない

司法書士として日々業務を行っていると、結構な頻度で「自宅の名義を妻にしたい」「夫婦共有から夫に名義を移したい」「親名義の家を子供へ変更してください」といったご相談を受けることがあります。

不動産の登記名義を変更することを『名義の書き換え』程度の認識しかないかもしれませんが、安易な気持ちでできるものではありません。

確かに相続の場合であれば、理由がはっきりしているので不動産の名義変更をすることは問題ありませんが、相続以外の理由で不動産の名義変更をするということは想像以上に簡単なことではないことを理解しなければいけません。(関連記事:相続以外の不動産名義変更の種類

相続以外で不動産名義変更を考える典型的な理由

1.親の所有する家に住んでいるから自分に名義変更をしたい。
2.親の土地のうえに建物を建てたので土地を自分に名義変更したい。
3.親族が家をくれると言ったから自分に名義変更したい。
4.住宅手当が出るから夫婦共有の持分割合を変更したい。
5.何となく親から自分へ名義変更をしておきたい。

不動産の名義変更を安易に考えてはいけない理由

不動産の登記名義を変更するだけでしょう?と思われるかもしれませんが、登記が移るということは現在の登記名義人から新しい登記名義人へ所有権という権利が移転することになります。

所有権が移転をするということは、当然のことながら税金の問題が出てきますし、所有権を移すための法律上の原因(売買、贈与、財産分与など)も必要になります。
司法書士としては、不動産名義変更をするためには個々のお客様の事情等を聴取し、そのうえで手続きを進めるのか判断します。お客様のように簡単に考えていないからこそ、司法書士は登記のプロなのです。単に不動産の名義を変更できればいい程度の安易な考えではいけません。

では、どういった理由で不動産名義変更が簡単ではないのか下記をご確認ください。

登記原因は何になりますか?

登記名義を変更するということは登記原因が必要です。相続、売買、贈与、財産分与など、沢山の登記原因がありますので、どの登記原因を使うのかはっきりさせなければいけません。
登記は、何らかの法律上の原因(登記原因)がなければ変更することはできません。「登記原因って言われても私はただ名義を変更したいだけなんです。」と言われても、司法書士はそれでは受けることはできません。不動産を売買したのなら「売買」、贈与したのなら「贈与」離婚して財産分与したのなら「財産分与」といったように、当事者間で行われた実体に即した登記を司法書士が申請します。

住宅ローンが残ってるのに勝手に名義変更しようとしてませんか?

高額な不動産を現金一括で買える方は稀なので、一般的には不動産は銀行から住宅ローンを組んで購入するはずです。そして、住宅ローンを組んでいるということは間違いなく当該不動産には「抵当権」という担保が付いているかと思います。銀行は、住宅ローン契約(いわゆる金銭消費貸借契約のこと)の契約条項の中に「当行に承諾なく勝手に不動産名義変更をした場合には一括返済を求めることができる」といった文言が盛り込まれているのが通常なので、抵当権がついている不動産の名義変更をすることはまず無理です(銀行実務上、不動産名義変更に承諾することはほとんどありません)。
よって、名義変更をしたい対象の不動産に抵当権が付いている場合には、事実上名義変更をすることは無理だと考えて差し支えないでしょう。(持分割合の変更には同意してくれるケースが稀にあります)
ただし、相続の場合には銀行の承諾なく名義変更をすることが可能です。また、売買代金で完済する場合など、売買と同時(もしくは事前に)に抵当権を消す場合には、不動産名義変更をすることが可能です。

税金の問題はクリアできそうですか?

不動産の名義を変更するということは、何らかの原因で不動産の所有権が次の名義人へ移転します。不動産という高額な財産の権利が移転するわけですから、税金の問題が生じます。
贈与であれば、贈与税を覚悟しなければいけません。売買であれば、譲渡所得税や不動産所得税、低額譲渡とみなされた場合には売買でも贈与税が発生してしまうこともあります。どういった登記原因かによって、税金の種類が異なってきますので、登記原因をハッキリするということはとても重要なことなのです。
この税金の問題を意識していない人はとても多いです。司法書士としても、この問題について抽象的な一般論のアドバイスをさせていただくくらいはできますが、個別具体的な税金の相談については、税理士でないと相談対応できませんので、税金が不安な場合には必ず税理士へ事前の相談されることをお勧めします。

不動産の名義を変更するためにはいくつかのハードルがある

ここまで説明してきたように、不動産の名義変更をするためには、様々なハードルを越えなければいけません。そして、このハードルの高さは登記原因によって異なります。
登記原因の中では最も「相続」が進めるハードルは低いです。相続は、自分の意思に関係なく法律上当然に起こるものであるため、税金面や手続面など、全てにおいてスムーズに進めることができます。
「売買」についても、他人間同士の通常の売買では比較的問題は生じませんが、親族間の売買では税務面で複雑な問題が出てきます(不動産名義変更をしたいとネットで調べている方の大半は親族間での売買です)。
特に「贈与」では、高額な贈与税が問題となりますので、100万円以下くらいの安い不動産以外では、十分に注意をしなければ痛い目にあいます。
司法書士への報酬や手続き費用を払えば名義変更できるんでしょう。と考えられてる方が多くいらっしゃいますが、実は不動産名義変更はそう簡単なものではありません。

本当に不動産の名義変更をする必要があるのか、税務的な問題は解決できるのか等、手続き面以外の実体的な部分に留意しながら、それでも必要があると感じるのなら司法書士へ依頼をすることを検討していただいた方がいいと思います。
税金といえば税理士かもしれませんが、司法書士へ相談していただければ登記をすることで税務的に問題がないのか一般論でのアドバイスはもらえるはずですので、もしわからないのなら一度司法書士へ相談してみるのがいいかもしれません。
(関連記事:税金での不動産名義変更の失敗例

不動産名義変更の実務について司法書士が思うこと

司法書士として、日々頻繁に不動産名義変更のご相談を受けています。その中で言えることは、お客様は名義変更を安易な気持ちでとらえれているということです。登記についての知識がないから仕方がないことなのかもしれませんが、司法書士としては現実問題を説明をするのが心苦しくもあります。
司法書士なら、お客様の希望を叶えてあげたいと思うもの。しかし、実際はそう簡単ではありません。不動産の名義書き換えをしたいと希望される大半の方が自分の登記原因を意識していません。つまり、名義を変えたいということが先行してしまって、前提となる部分が抜け落ちているのです。この前提部分が抜け落ちているということは、どういった法律上の理由で名義変更をするのかが決まっていません。
このように司法書士へ相談される方の大半は『登記原因』がはっきりしていないお客様です。登記原因が決まっていないということは実体的な問題点を理解していませんので、相談を聞いてみるとどうしてもハードルが越えられず名義変更を断念することになってしまいます。
(関連記事:登記原因証明情報とは
司法書士としてこれは非常に悩ましいことでもあります。不動産の名義変更についても知識を十分に蓄えたうえで手続きに挑まれることをお勧めいたします。(関連記事:相続以外の不動産名義変更の種類

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この記事の監修者

司法書士・行政書士法人よしだ法務事務所 代表 吉田隼哉

開業当初より、相続の分野を専門として業務を行う。
得意分野は「不動産を含む相続手続き」。テレビ「NHKクローズアップ現代」や雑誌プレジデント・AERA等の執筆、メディア実績多数。情報番組での空き家問題の取材実績あり。


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1.不動産名義変更は所有権移転登記?
2.相続以外の不動産名義変更の種類
3.司法書士とは
4.司法書士事務所の依頼は自宅と不動産のどちらの近くがいいか
5.司法書士の選び方・探し方
6.不動産名義変更の心構え
7.登記とは(制度や歴史)
8.不動産名義変更はどこでやるのか
9.不動産名義変更の登録免許税一覧
10.不動産名義変更の完了までにかかる期間

11.不動産名義変更の失敗例・注意点・間違いやすいポイント
12.勝手に相続登記を入れられることはあるのか
13.不動産名義変更(相続登記)を自分でやる方法
14.持分だけ不動産名義変更する場合の注意点
15.相続による不動産名義変更に期限は存在するのか
16.不動産名義変更は権利であって義務ではない
17.相続発生後に不動産名義変更を放置するデメリット①
18.相続発生後に不動産名義変更を放置するデメリット②
19.住所(氏名)変更登記とは
20.戸籍謄本の一部が戦争で焼失した場合の上申書 

21.住民票の除票が取得できなかった場合の上申書
22.農地の名義変更の注意点
23.名義変更を簡単に考えてはいけない理由
24.登記の第三者対抗要件とは
25.不動産の登記簿謄本の取り方
26.不動産の登記簿謄本の読み方
27.相続登記は相続人全員でやらなけらばいけないのか
28.遺贈により相続人以外に不動産名義変更をする場合
29.法定相続分での相続登記
30.遺産分割による相続登記について 

31.登記の本人申請とは
32.相続登記をしないまま単独相続人が死亡したら
33.登記先例とは
34.法定相続分での相続登記後に遺産分割した場合
35.相続した借地上の建物の名義変更 
36.
遺言による相続登記
37.遺産分割調停による相続登記 
38.
不動産を生前贈与する場合の注意点
39.表示登記と権利登記の違い
40.マンションの敷地権とは 

41.胎児がいる場合の相続登記
42.相続登記の後に遺言書が見つかったら
43.相続分の譲渡をした相続人がいる場合の相続登記
44.遺言により不動産を相続人と相続人以外へ相続をしたら 
45.
相続登記時に付随した私道等の移転漏れに注意 
46.
相続した未登記建物の名義変更について 
47.
登記申請の3つの方法(書面・郵送・オンライン) 
48.
親族間での不動産名義変更は売買か贈与か
49.権利証が見つからない場合の不動産名義変更
50.登記の補正とは 

51.登記の取下げ・却下とは
52.登記済権利証と登記識別情報の違い
53.地番・家屋番号とは
54.登記原因証明情報とは
55.所有権保存登記とは
56.相続登記(不動産名義変更)とは

1.相続した不動産を売却する流れ
2.相続した不動産の換価分割とは
3.相続不動産の売却の前提として相続登記が必要
4.相続不動産の売却にかかる経費まとめ
5.譲渡所得税とみなし取得費
6.物件の調査と相場の調べ方
7.住宅ローンが残っていても相続不動産は売れるのか
8.3つの媒介契約とは(一般・専任・専属専任)
9.相続不動産の売却先にするべきは個人か買取業者か
10.不動産売買契約書に貼付する収入印紙額一覧

11.相続した土地の売却に必要な測量
12.遺品整理業者とは
13.遠方の相続不動産を売却する場合の注意点
14.相続をきっかけとする空き家問題
15.相続した戸建てを売る場合の注意点
16.相続したマンションを売る場合の注意点
17.再建築不可物件とは
18.事故物件(心理的瑕疵物件)とは
19.セットバックとは
20.建物解体業者の選び方と相場 

21.空き家対策特別措置法とは
22.空き家の譲渡所得税3000万円特別控除
23.相続不動産の売却と瑕疵担保責任
24.不動産流通機構(レインズ)とは 
25.
相続した不動産の共有持分だけ売却できるか
26.4つの土地の評価方法
27.相続した借地上の建物を売却する方法
28.売却したい相続不動産に住む相続人が立ち退かない
29.認知症の相続人がいる場合の相続不動産売却
30.400万円以下の売主側仲介手数料の改正
31.一部の相続人が不動産売却に応じないときは

32.定期借地権付き建物を相続したら

1.普通失踪と特別失踪とは
2.相続財産の3つの分け方
3.胎児も相続人となるのか
4.法定相続人の範囲について
5.各相続人の法定相続分の計算方法
6.養子の法定相続分とは
7.嫡出子と非嫡出子の法定相続分について
8.内縁の妻(夫)にも相続権はあるのか
9.行方不明の相続人がいるケースの遺産分割
10.認知症の相続人がいるケースの遺産分割

11.相続人の中に未成年者がいるケースの相続まとめ
12.特別代理人の選任申立ての方法
13.相続欠格とは
14.相続人廃除とは
15.戸籍謄本とは
16.遠方の戸籍謄本の取り寄せ方法
17.相続財産に含まれるもの
18
生命保険金は相続税の課税対象か
19.死亡退職金は相続税の課税対象か
20.相続開始後のアパート賃料は遺産分割の対象か

21.名義預金と相続税について
22.香典や弔慰金は相続財産となるのか
23.借金(債務)は必ず相続するのか
24.故人の債務・借金の調査方法
25.病院代等の医療費の支払い義務は相続するのか
26.葬儀費用は相続するのか
27.単純承認とは
28.限定承認とは
29.相続放棄とは
30.家庭裁判所への相続放棄の申述方法 

31.相続放棄の3ヶ月熟慮期間の伸長
32.3ヶ月経過後の相続放棄
33.相続放棄の取り消し・撤回
34.相続放棄と生命保険金
35.相続放棄と空き家の管理責任
36.生前でも相続放棄できるのか
37.死亡届の提出
38.準確定申告とは
39.遺産分割協議の流れ・進め方
40.海外の相続人がいる場合の遺産分割

41.相続関係から離脱するためには
42.自筆証書遺言とは
43.秘密証書遺言とは
44.公正証書遺言とは
45.家庭裁判所での遺言書の検認手続き
46.自筆証書遺言と公正証書遺言の比較
47.遺言があっても遺産分割できるのか
48.特別受益とは
49.換価分割とは
50.代償分割とは

51.銀行が故人の預金口座を凍結するタイミング
52.相続した預貯金口座の解約方法
53.相続税申告のための残高証明書と取引明細の取得方法
54.株式の相続手続きについて
55.改正による旧相続税と新相続税の比較
56.相続税の申告方法
57.遺産分割協議が整わない場合の相続税申告
58.相続税の分割払い・物納の方法
59.相続税の各種控除・特例について
60.相続税の申告・納付を怠ったら

61.遺言を書くメリットとデメリット
62.絶対に遺言を書いておくべき人とは
63.遺言執行者とは
64.特別の方式による遺言
65.遺言と意思能力の問題
66.公正証書遺言の作り方
67.遺言公正証書作成にかかる公証人手数料
68.親に遺言を書いてもらうためには
69.遺言の書きなおし・一部修正の方法
70.遺言に記載された財産を生前処分すると

71.付言事項とは
72.複数の遺言が見つかったら
73.遺贈寄付とは
74.遺言作成を専門家へ依頼するメリット
75.相続時精算課税制度とは
76.代襲相続と数次相続の違い
77.遺産分割を放置するデメリット
78.遺産分割調停とは
79.包括遺贈と特定遺贈の違い
80.遺贈と死因贈与の違い 

81.除籍謄本と改製原戸籍
82.資格者による戸籍謄本等の職権取得
83.疎遠な相続人との遺産分割
84.成年後見制度とは
85.相続した預貯金口座の調べ方
86.期限付きの相続手続きまとめ
87.遺産分割協議書と遺産分割証明書の違い
88.公正証書遺言の検索方法・調査
89.法定相続情報証明制度とは
90.法定相続情報証明制度の問題点と今後

91.高齢者消除と相続
92.同時に死亡した場合の相続関係
93.準正とは
94.再転相続とは
95.相続財産管理人とは
96.遺留分減殺請求権の行使
97.戸籍と住民票の保管期限
98.相続分の譲渡とは
99.いらない土地を相続放棄できるか

100.遺言書の財産目録がパソコンで印字可能に

 

テレビ取材・雑誌の執筆等

当事務所は相続遺言の分野でメディア取材・執筆実績が多数あります!

・雑誌「プレジデント」2020.12.18号
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・雑誌「AERA」2018.4.15号
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・雑誌「AERA」2017.1.23号 他

代表司法書士プロフィール

司法書士・行政書士 吉田隼哉

・司法書士よしだ法務事務所 代表
​・行政書士法人よしだ法務事務所 代表
・NPO法人よこはま相続センター 理事
・一般社団法人相続の窓口 事務長

「開業当初より相続分野に積極的に取り組んでおります。遺産承継業務や遺言執行といった財産管理を得意としております。相続のことならお任せください!」
【保有国家資格】
司法書士、簡易訴訟代理権認定、行政書士、ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引主任者、他多数

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