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相続発生後に不動産名義変更を放置するデメリット①…手続きの複雑化

そのまま放置したらどうなるのか

不動産を売買で取得した場合、契約書の締結、更に代金の支払いが完了すると最後に不動産の名義を買主に変更するため司法書士に登記申請を頼むことになります。不動産を購入したことがある方ならそうした経験があるかと思います。
この不動産の名義変更(=登記)は登記名義人に変更が生じた場合には必ず行わなければならない手続のように思われますが、実は絶対に行わなければならない手続ではありません。
名義変更をしておかないと権利関係のトラブルの際に問題になる可能性はありますが、法的に名義変更が強制されているわけではないのです。
(関連記事:不動産名義変更の登記は義務ではない?

特に今回解説する、相続による名義変更においては、相続人が相続放棄をしたわけではないにも関わらず不動産の名義変更を行っていない件数は相当数あります。
「所有者不明土地問題研究会』の推計では、長期間未登記(名義変更をしていない)になっている土地の広さの合計は九州を超えるとされています(平成29年6月発表)。
なぜ、名義変更をしないのかの解説は、今回は割愛しますが、固定資産税の納付をしたくないために名義変更をしない場合、もしくは、そもそも相続人が相続不動産の存在を認識していないことが主な原因です。
では、このように相続財産である不動産について名義変更を行わないと、その後どういったデメリットが生じるのか、「相続発生後に不動産名義変更を放置するデメリット」について解説していきます。

不動産名義変更を放置したことによる手続きの複雑化

被相続人が亡くなると相続が発生します。
相続が開始すると相続人は被相続人が相続開始時点に有していた財産を相続(取得)します。相続した不動産については、遺言がなければ、相続人が登記の申請人となり、被相続人名義から相続人名義人に不動産の名義を変更することになります。

しかし、先述したような何らかの事情により相続人が名義変更をしないまま不動産を放置すると、当然時の経過とともに本来名義変更をするべきであった相続人は亡くなります。では相続人がなくなった後、相続財産である不動産の名義変更手続きが終わっていない場合はどうなってしまうのか。
相続人が本来行うべきだった相続財産の名義変更手続きは当初の相続人(子)の更に相続人(孫)である者が引き継いで行う必要があります。
相続人が名義変更せずに更に相続が開始してしまうことにどういった問題が生じてしまうのかというと、相続が繰り返されることにより名義変更を行うべき相続人の数が増加し、また相続人が増加することにより相続人間の関係が希薄化することにあります。

簡単な例を挙げて説明すると、最初の被相続人が祖父の場合、祖父所有の不動産の名義変更を行う相続人はその祖父の子どもである父親世代です(祖母は既に他界していると仮定)。その後名義変更を行うべき父親世代の相続人の1人でも名義変更手続きをせずになくなると、孫の世代の相続人が登場します。例えば下記のような家族構成の場合で説明します。

①<被相続人 祖父A>

②<相続人 B(Aの子)、C(Aの子)、D(Aの子)>

③<②の相続人 E(Bの子)、F(Bの子)、G(Cの子)、H(Cの子)、I(Cの子)、J(Dの子)、K(Dの子)、L(Dの子)>

④<③の相続人 M、N、O、P・・・・・・・

被相続人Aがなくなったときの相続人はB,C,Dであり、これら相続人が遺産分割協議を行って、名義人(不動産の所有者)を決め、名義変更手続きを行います。仮に、それらを放置したままBが亡くなった場合は、C,DとBの子であるE,Fが遺産分割協議、名義変更手続きをすることになります。
上記のような、まだ叔父叔母と甥姪で遺産分割協議、名義変更をともにおかなうのであれば、それほど困難ではありませんが、これが従兄弟、更にその子ともなると、ほとんど親戚同士の交友がない相続人も現れてきます。そうなると遺産分割協議、名義変更手続きを進めていくのは、なかなか骨の折れる作業になります。
特に名義変更を行う登記申請の際に、遺産分割協議を原因とする申請の場合は相続人全員の実印での捺印、印鑑証明書の添付が必要となります。ほとんど交友のない親族間で実印での捺印、加えて印鑑証明書を交付してもらうのは簡単ではないことや容易に想像できるでしょう。
(関連記事:遺産分割を放置するデメリット

不動産名義変更を放置したことでトラブルになった過去の事例

前項では、相続人が増加する毎に、名義変更手続きが煩雑になることを説明しましたが、名義変更の放置がトラブルにつながるケースもあります。

被相続人Aは事業を営んでおり、事業に使用するために被相続人A名義の不動産(甲)を所有していた。その後Aは昭和の初期に亡くなり、Aの長男であるBが事業を承継し、Bが甲の権利を相続することで他の相続人(7人)と遺産分割協議が成立していた。なお、B以外の相続人全て被相続人Aの子どもでBの兄弟であり、Bは8人兄弟であった。
B以外の兄弟はその後家を離れ、各々家庭を持っていた。Bらは遺産分割協議を行ってはいたが、協議書を作ることもせず、甲の名義変更もしていなかった。その後、Bも亡くなり、Bの事業をCが承継した。
Cは、融資を受ける際に担保が必要だったため、甲を担保にしようと考え甲の登記簿を確認したところ、甲の名義はAのままであった。法務局で自分の名義に変更するには、Bの兄弟(兄弟が既に亡くなっていた場合は、兄弟の配偶者、子供)との遺産分割協議書及び印鑑証明書が必要であると聞いた。
全く面識のない親族もおり、Cは相当の時間をかけ相続人全員を見つけ、遺産分割協議書への署名捺印を頼んだが、何人かの相続人から、遺産分割協議は行われてはいない旨及び甲の権利の主張がなされた。

上記は、遺産分割協議を書面にしていなかった、更に名義変更をすべき時に名義変更をしていなかったことにより生じたトラブルです。
遺産分割協議を行った相続人は既に亡くなっており、遺産分割協議を証明する書面も何もないため、Cは名義変更もできず、更に甲の権利の一部も失う恐れが出てきてしまったのです。
このように不動産の名義変更を放置してしますと、後々のトラブルに繋がってしまう可能性があります。本来やるべき時に手続きを完了しておけば、不動産の権利までも脅かされずに済んでいたでしょう。

不動産名義変更を放置したその他のデメリット

ここまで解説してきた問題以外でも次回(名義変更を放置すると、必要書類取得の面からもデメリットがある)で詳しく解説しますが、登記に必要な書類の取得でも苦労することになります。
このように不動産の名義変更を放置することに、良いことは1つもありません。
固定資産税を納税したくないから放置してしまう方もいらっしゃいますが、それなら不動産を処分するか相続放棄をしてしまった方がよいです。名義が変わってなくても不動産は相続されますので、その不動産を原因として起きた損害の責任は、当然相続人が負うことになります。そうであるならば、相続開始時に名義変更をしてさっさと処分してしまうか、それが難しいのであれば相続放棄をしてしまった方がよいです。
とにもかくにも相続するのか、しないのかに関わらず、手続きを放置することは避けるべきです。

このページでは、相続発生後に不動産名義変更を放置した場合には手続きや権利関係がどのように複雑化してしまうのかを解説していきました。次のページでは、不動産名義変更を放置すると必要書類面でどういった不都合が生じるのかに着目して解説します。
相続発生後に不動産名義変更を放置した場合のデメリット②…必要書類の取得が難しくなる 


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・司法書士よしだ法務事務所 代表
​・行政書士法人よしだ法務事務所 代表
・NPO法人よこはま相続センター 理事
・一般社団法人相続の窓口 事務長

「開業当初より相続分野に積極的に取り組んでおります。遺産承継業務や遺言執行といった財産管理を得意としております。相続のことならお任せください!」
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