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遺産分割協議は、相続開始により法定相続人の共有となった遺産を、個々の財産に分けるためにおこない、相続人全員の同意により成立します。
一度成立すれば効力が生じ、無効、取り消しの原因がない限りは、やり直しを主張することはできません。各相続人は、遺産分割協議の内容に則して何を相続するかが決まります。
遺産分割協議を行うためには、全体的な大枠を知っていないとわかりにくいかと思いますので、まずは全体像をご紹介します。
なお、ここでは教科書通りの流れではなく、実際の遺産分割実務に即した流れとなっています。(教科書通りなら、いきなり預金の残高証明書を取得しろと書かれているかもしれませんが、実際はそんなことしません。)
まずは遺産分割の対象となる相続財産を洗い出します。最初の段階で登記簿謄本を取得したり預金の残高証明書を取得する必要はありません。まずは、おおよその財産を把握するだけで問題ありません。(関連記事:不動産の登記簿謄本の取り方)
この段階でいきなり戸籍謄本を取得して相続人を確定させる必要まではありません。まずは、誰が相続人となるのかだけわかれば問題ありません。(関連記事:法定相続人の範囲について)
被相続人が生前に遺言を作成していたのか確認します。親族の中で遺言のことを知っている人がいないか、タンスや金庫などにしまっていないか、わかる範囲で問題ありませんので、遺言の有無を調べましょう。なお、作成した遺言が公正証書であれば、公証役場で「遺言検索システム」を使うことにより調査することが可能です。
ここまでで大体の相続財産や各法定相続人の相続分がわかるはずですので、それぞれ自分が取得できる分を判断できるはずです。この段階になってはじめて、相続人それぞれに遺産分割の気持ちを聞いてみるようにしましょう。はっきりとした気持ちまでわからなくとも、各相続人の何となく考えている気持ちだけでも聞き出せればいいです。
相続手続きには必ず相続人代表として舵を取る人が必要になります。それぞれの家族関係や親族関係で異なるかもしれませんが、相続人の中で何となく誰がリーダーシップを取ってくれるのか決まっているものです。誰かが各相続人の気持ちを取りまとめて遺産分割の方針決定を行うようにしましょう。
⑤で詰めた内容で遺産分割協議書を作成します。通常は、いきなり遺産分割協議書を相続人の目の前に出して「署名捺印してくれ。」なんてことはしません。協議書を作成する前段階で各相続人の気持ちの裏取りをしてから、間違いなくまとまる内容での協議書を作成します。
遺産分割協議は被相続人の残した遺産を、各相続人がどのように相続するかを決める話し合いです。
そのため、相続人のうちの誰かを除外したり、相続人以外の者を加えておこなった遺産分割協議は無効となります。
遺産分割協議は、相続人が全員参加しておこないますが、その前段階で、遺産とされる財産の評価をおこなわなければなりません。(遺産分割協議時点での評価で構いません。)
そのうえで、マイナスの財産があれば、その分は控除し、その他寄与分の主張があったり、特別受益者がいる場合もあります。遺産分割は相続人全員の共有財産を分割するわけですから、全員が納得をすれば遺言による指定相続分や法定相続分と異なっても問題ありません。ただし、紛争となれば法定相続分による相続となると考えられますので、あくまで相続人全員の合意を得る努力が必要です。
民法906条では、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と言っています。
例えば、被相続人が商店を経営し長男が手伝っていたとすれば、商店を残すような話し合いをするべきであり、相続人のなかに障害者がいれば、そのことも考慮するべきでしょう。
話がどうしてもまとまらない場合には、家庭裁判所へ調停又は審判を申し立てて決めてもらう方法もあります。
相続人全員での遺産分割の話し合いがつけば、その流れで、遺産分割協議書を作成するのが通常です。遺産分割協議書は作成をしないからといって、その遺産分割協議が無効になるわけではありません。
しかし、遺産分割協議書が作成されていないと、不動産を取得した相続人は名義変更の登記をすることはできません。
また、被相続人の預貯金を解約する場合にも、この遺産分割協議書が必要になります。
なお、遺産分割協議書は定型の方式はありませんが、ある程度、法律的な文章で作成する必要があり、遺産分割の要素となる部分をきちんと明記して、後日トラブルとならないように協議書で作成をするようにしましょう。
(1)錯誤によるもの
当事者の意思表示に瑕疵がある場合、遺産分割協議は契約の一種であることから、当事者の意思表示の重要な事項につき錯誤がある場合には分割協議は無効となります。
ただし、当事者の意思表示が要素の錯誤に基づく場合であったとしても、それが重大な過失に基づく場合は無効とはなりませんので、簡単には認められることはありません。
(2)遺産の一部を見逃して分割協議をした場合
以下のような判例があります。
「分割協議の目的とした一部の遺産と残余財産との区別や両者を分離して処理することについての当事者の合意が不十分であれば、協議は無効である。」
ただ、遺産全体から見て、見逃した遺産がごく一部であって、当初の遺産分割協議を無効にするまでもない時は、未分割遺産のみを分割することも問題ないでしょう。
だまされて作成したり、脅されて作成した場合には、民法96条の意思表示の詐欺、強迫を理由に取り消すことが可能です。
また、成立した遺産分割協議を、相続人間の合意によって解除することは可能なのでしょうか。
「共同相続人の全員が既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて、遺産分割協議をなしうることは、法律上、当然に妨げられるものではない。」
判例では、遺産分割協議が成立していたとしても、相続人全員で改めてご破算にしようとする場合は、再協議は可能といっています。
未成年者がいる場合の遺産分割協議の流れです。
通常、未成年者については親権者が法定代理人として法律行為をおこないます。
しかし、遺産分割の場合、未成年者と法定代理人(親権者)の利益が相反する場合には、未成年者の特別代理人の選任が必要になってきます。
遺産分割は利害をともなうものですので、利益の相反する者(未成年者とその親が共に相続人になっている時)が代理人になって、自分の分と未成年者の子の両方の取り分を決めることは許されません。
これらの場合には、親権者は利益が相反する未成年者のため、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求しなければなりません。(関連記事:相続人の中に未成年者がいるケースの相続まとめ)
遺産分割協議後に相続人と名乗る者が現れた場合にはどうすればよいのか。
まず、被相続人とはどういう関係なのかを確認し、相続人に該当するかを知る必要があります。
相続第1順位では配偶者と子が相続人ですから、誰も知らない間に再婚をしていた、愛人との間に子がいた場合には問題となることがあります。
再婚をしていた場合には、婚姻が法律上のものであるか確認します。
戸籍上に配偶者としての記載があれば、「妻」としての相続権がありますので遺産分割協議をやり直すことになります。
愛人との間に子がいた場合には、認知されているかどうかが問題になってきます。
認知されていた場合には当然相続権はありますので、遺産分割協議に参加することになります。
認知されていなければ相続権はありませんが、家庭裁判所に認知請求をして認められれば、相続権が発生します。したがって、この場合も遺産を承継することができますが、遺産分割がすでに終わっている場合は、金銭による支払いの請求しかできません。
(認知請求は親が死亡してから3年以内にしなければなりません。)
遺産分割の話し合いがまだついていないのに、遺産分割協議書が偽造され、相続財産が特定の相続人が独占する場合があります。
この場合には、遺産分割協議がなされたことになっていませんので、相続回復請求権※1を行使して、相続財産を取り戻すことになります。
※1 民法884条「相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から20年を経過したときも、同様とする。」
この記事の監修者
司法書士・行政書士法人よしだ法務事務所 代表 吉田隼哉
開業当初より、相続の分野を専門として業務を行う。
得意分野は「不動産を含む相続手続き」。テレビ「NHKクローズアップ現代」や雑誌プレジデント・AERA等の執筆、メディア実績多数。情報番組での空き家問題の取材実績あり。
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91.高齢者消除と相続
92.同時に死亡した場合の相続関係
93.準正とは
94.再転相続とは
95.相続財産管理人とは
96.遺留分減殺請求権の行使
97.戸籍と住民票の保管期限
98.相続分の譲渡とは
99.いらない土地を相続放棄できるか
≫実家を亡父親から母親名義に変更する相続登記
≫亡くなった母親から長女へ名義変更をする
≫公正証書遺言が残されていた場合の相続登記
≫5年前に亡くなった父親の相続登記
≫亡くなった兄から名義変更する相続登記
≫田舎にある実家の相続登記
≫父親が残した自筆証書遺言での相続登記
≫亡くなった叔父の自宅の相続登記
≫未成年者が相続人にいるケースの相続登記
≫地主だった父親名義の不動産を相続登記
≫相続した未登記建物の名義変更
≫代位による相続登記後に遺産分割した相続登記
≫母親と父親が順に亡くなった場合の相続登記
≫一部の相続人が相続放棄した場合の相続登記
≫相続した対象不動産がよくわからない相続登記
≫家裁で検認した遺言書を使わずに相続登記
≫売却の前提としての相続登記
≫登記済権利証が見つからない場合の相続登記
≫自宅と原野の相続登記
≫孤独死で亡くなった叔父の自宅を相続登記
1.父親名義の実家を母親に変更したい
2.亡くなった母名義のマンションを名義変更したい
3.父から相続した二世帯住宅の名義変更をしたい
4.単独相続した母親のマンションを名義変更
5.兄から相続した遠方の不動産を名義変更したい
6.父と母が順に亡くなった場合の不動産名義変更
7.叔母から代襲相続したマンションの名義変更
8.父がのこした公正証書遺言での不動産名義変更
9.実家と別荘の不動産名義変更をしたい
10.上物(建物)は自分名義のため土地のみ名義変更
11.権利証を紛失した不動産の名義変更
12.売却の前提として至急の不動産名義変更
13.未成年者がいる場合の相続した不動産名義変更
14.相続税申告が絡む不動産名義変更
15.相続人が12人いる場合の不動産名義変更
16.相続人の1人が相続放棄した後の不動産名義変更
17.遺贈により相続人以外が取得したマンションの名義変更
18.対象不動産が不明な場合の相続登記
19.一筆の土地を分けて兄弟がそれぞれ相続する事例
20.複数ある不動産を遺産分割で相続人が分けて名義変更
1.兄弟で相続した不動産を売却して代金を分けたい
2.父親が他界したので実家を売却して姉妹で分割したい
3.兄弟3人が相続した実家を換価分割する
4.遠方の相続人がいる場合に実家を換価分割したい
5.空き家の3000万円控除を使って売却する
6.事故物件となったマンションを売却したい
7.税金滞納で差し押さえられた相続不動産を売却したい
8.相続した地方の実家を換価分割したい
9.相続人が多数いる場合に換価分割するケース
10.スムーズに相続した実家を換価分割したい
11.相続した定期借地上の建物を売却して解決した事例
12.相続した不要な土地と自宅をまとめて売却
13.入居者がいる相続したアパートを売却して換価分割
14.月極駐車場で貸している土地を換価分割
15.自殺があった相続不動産を売却して換価分割
16.不仲な姉妹共有の相続不動産を売却
17.相続放棄を検討していた家を売却
18.孤独死があった家を相続して売却換価
19.公正証書遺言の内容に従って換価分割
20.平等に姉妹で相続した不動産を売却して分割
・司法書士よしだ法務事務所 代表
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