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相続発生後に不動産名義変更を放置するデメリット②…必要書類の取得が難しくなる

必要書類面で大変になる?!

前回の記事では、不動産名義変更を放置すると様々なデメリットが生じることについて解説しましたが(前回の記事『相続発生後に不動産名義変更を放置するデメリット①…手続きの複雑化』)、今回は登記申請に必要となる書類の取得に関して生じるデメリットを解説したいと思います。
簡単に言ってしまうと、相続による名義変更の登記申請に必要となる書類の中には、一定の期間が経過すると取得できなくなる書類があります。その書類が取得できない場合、代わりになる書類の取得が必要になってしまいますので、名義変更手続きが面倒になります。
では、取得が出来なくなる書類の解説の前に、まず相続による名義変更にはどのような書類が必要になるのかを簡単に解説していきます。

相続登記(不動産名義変更)に必要な書類

不動産名義変更をするための相続登記には、準備しなければいけない書類があります。まず、必要となる書類をお見せして、それから各書類の詳細な説明をしていきます。

【相続登記(不動産名義変更)に必要な書類一覧】

①被相続人の戸籍、除籍謄本(出生から死亡まで)

②相続人全員の戸籍謄本

③不動産を取得する者の住民票

④被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票

⑤遺産分割協議書・遺言書

⑥相続人全員の印鑑証明書・遺言執行者の印鑑証明書

①被相続人の戸籍、除籍謄本(出生から死亡まで)
まず、被相続人の出生から死亡までの戸籍、除籍謄本が必要になります。これは、被相続人の相続人が誰になるのかを確認するために必要になります。最新の戸籍謄本だけですと、転籍、婚姻や戸籍が改正されていた場合に相続人を見落とす可能性があるからです。また、被相続人の出身地が遠方の場合であっても、当該出身地を管轄する役所に向けて戸籍謄本を請求しなければいけません。
(関連記事:遠方の戸籍謄本の取り寄せ方法


②相続人全員の戸籍謄本
相続人が被相続人の相続人であることを証明するために必要になります。相続人が被相続人の子供であれば、相続人の戸籍の両親の欄の記載で相続人であることが確認でき、相続人が夫又は妻であれば配偶者の欄で相続人であることが確認できます。


③不動産を取得する者の住民票
相続人が不動産を相続するのであれば、不動産を取得する相続人の住民票が必要になります。住民票は本人が実在する人間かを確認するため、また登記簿(登記事項)に登記名義人の住所を記載するために必要になります。


④被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票
被相続人が不動産の名義人と同一人物かを確認するために必要になります(別名、「同一証明」と呼ばれることがある)。③の不動産の取得者の住民票にあるように、登記名義人(所有者)住所は登記簿(登記事項)に記載されます。登記名義人の住所と被相続人の最後の住所が同一であることを確認し、被相続人が所有者であると確認します。


⑤遺産分割協議書・遺言書
遺産分割協議によって不動産の名義人となる方が決まった場合は必要になります。法定相続で不動産を取得する場合は必要ありません。

 

⑥相続人全員の印鑑証明書・遺言執行者の印鑑証明書
遺産分割協議が行われた場合、遺産分割協議書には相続人の実印で捺印します。
そのため遺産分割協議書による名義変更には、相続人全員の印鑑証明書が必要になります。法定相続の場合は必要ありません。

以上が、相続による名義変更の登記申請に必要となる書類です。上記書類の中で除籍謄本、住民票の除票、戸籍の附票に関しては、一定の期間後取得できなくなる恐れがあります。

住民票の除票、戸籍の附票が取得できなくなる恐れ

相続による名義変更の登記申請に必要な書類について解説しましたが、その中で、除籍謄本、住民票の除票、戸籍の附票については、一定の期間が経過すると破棄される可能性があり、破棄されてしまうと取得が出来なくなります。

【時間の経過と共に取得できなくなる可能性がある書類】

(1)除籍謄本
戸籍内の全員が除籍になってから150年経過した場合は、当該除籍は破棄される可能性があります。なお、以前は80年の期間(2010年に150年に変更)だったため既に破棄されてしまっている可能性もあります。

(2)住民票の除票
住民でなくなると住民票は住民票の除票となります。住民でなくなるとは、転出又は死亡した場合です。そして住民票の除票は5年経過すると住民票の除票は取得できなくなる恐れがあります。

(3)戸籍の附票
戸籍の附票とは、本籍地において管理されている、住所の履歴のようなもので、この戸籍の附票は除籍になってから5年で破棄される可能性があります。破棄されてしまうと取得することが出来なくなります。

以上のように、3つの書類は期間経過により破棄される可能性があり、破棄されてしますと取得が出来なくなります。ただし、破棄されてしまう可能性があるだけで、破棄されるかどうかは役所の対応次第です。特に①の除籍謄本に関しては当初の80年経過後も破棄されていないケースが多くあります。

必要書類が破棄されてしまった場合は

(1)(2)(3)の書類が破棄されて取得できない場合には、名義変更はどうすればよいのか。(1)の除籍謄本に関しては、役所に取得の申請をすると破棄証明書(後述します)を発行してもらえますので、それを破棄された除籍謄本の代わりに使用します。(2)(3)については、不在籍不在住証明書+権利証で対応するケースが多いです。ただし、これらでも対応できない場合もあり、その場合は別個上申書等の書類を法務局に提出して名義変更を行います。
ケースによって対応の方法が変わりますので、書類の取得が困難な場合は、不動産の名義変更の専門家である司法書士に頼んだ方がよいでしょう。
ここまで解説してきたように、不動産の名義変更を放置しておくと、必要な書類の面、実体的な手続きの面の両面から名義変更が困難になる恐れがあります。
売買においては必ず名義変更を行うのに相続においては行われないケースが多くあります。放置したまま時間が経過してしまうと、手続きにかかる時間、費用が増加しますので、相続が発生したら早めの対応が必要です。

それでは、もし時間が経過してしまって戸籍謄本や住民票が取得できない場合はどうすればいいのでしょうか?実は、役所はそれら取得できない書類については、代わりに『破棄証明書』や『焼失証明書』といった書類を発行してくれます。

文書破棄証明書・焼失証明書(告知書)

文書破棄証明書について

文書の保存期間は、法令や横浜市の規定に基づいて決められています。
この保存期間を経過した文書は廃棄されるため、申請があっても証明することができません。
このようなときに、申請によって「文書が廃棄された証明」を発行することができます。(手数料は1通300円です) 

横浜市泉区HP参照:文書破棄証明

前述したとおり、役所は法令で定められた期間が経過すると、当該証明書を破棄してしまうことがあります。役所が書類を破棄することなんて滅多にないのでは?と思われるかもしれませんが、実務上は結構多くあります。
役所に破棄されてしまった証明書を取得することは不可能なので、代わりにこの文書破棄証明書を発行してもらって対応するほかありません。(横浜市では文書破棄証明書といった呼び名を使いますが、役所によって呼び名が異なる場合があります。一般的には「破棄証明書」といえば役所の人に通じます)

ただし、この文書破棄証明書では、当然のことながら証明書が破棄された事実しか記載されていません。つまり、その破棄された証明書に書かれていたことは一切何も書いていないことになります。
法務局によっては、この破棄証明書だけは登記受理を認めてくれないことがありますので、上申書を作成したり、権利証の添付を求めてきたりする場合があります。破棄されて証明することができない期間の長さであったり、各法務局の取り扱いの違いだったりで対応方法が異なってきますので、個別に対応するしかありません。
住民票の除票が保管期限経過により破棄されてしまって提供することができない場合の上申書については、こちらの記事が参考になると思います。
住民票の除票が取得することができなかった場合の上申書(見本)

焼失証明書(告知書)について

戸籍や除籍が震災・火災により焼失し,戸籍や除籍の再製が行われていないか,再製が困難なため戸籍謄本等の証明が交付できない旨の証明です。市区町村によっては名称が異なることもあります。
横浜市では,特に関東大震災や戦争時の空襲によりこの時期に除籍となっていた戸籍については焼失証明として告知書の発行となる場合があります。証明には当該請求戸籍が明らかにあったことを請求者は別の戸籍謄本等で証明する必要がある場合があります。

横浜市鶴見区HP参照:告知書

この焼失証明書は、役所が震災や戦争によって証明書を焼失してしまった場合に代用手段として役所が発行してくれるものです。
特に横浜市の場合には、焼失されているケースが多々あります。私の経験上では、横浜市の中でもとりわけ鶴見区の証明書が焼失されていることが多いです。この焼失証明書についても役所によって呼び名が異なることがあります。横浜市では、告知書と呼ぶようですが、一般的には焼失証明書と言った方がわかりやすいかもしれません。
この焼失証明書についても破棄証明書と同様に、証明書に記載された部分については何も書かれていませんので、各ケースごとに個別に対応するしかありません。
戸籍謄本の一部が焼失により発行できない場合の上申書については、こちらの記事が参考になると思います。
戸籍謄本の一部が戦争で焼失してしまった場合の上申書(見本)

書類が揃わない場合の最終手段(不在籍不在住証明書+権利証)

破棄証明書や焼失証明書について解説をしましたが、実は役所によってはそういった書類すら出してくれない場合があります。(どういった理由で破棄・焼失されたかが判明しない場合など)
そういった場合には、当然法務局側では、提出することができない部分の戸籍謄本等を確認することができませんので、登記は受理してもらえません。こういった場合にどうすればいいのか?

司法書士も数多く相続登記を申請していれば必ず証明書が揃わない事案に遭遇することがあります。そのような場合には実務上、最終手段を使うことで登記を受理してもらいます。それは、不在籍証明書と不在住証明書を取得して、さらに権利証コピーを登記申請書に添付して登記申請する方法です。
不在籍証明書と不在住証明書についての解説はここでは割愛しますが、誰でも役所で取得することができるものです。
権利証コピーを登記申請書に添付する趣旨としては、「権利証を持っている人が登記申請をしているのだから、権利者で間違いないでしょ?権利証を持っている人が登記申請しているのだから登記申請を受理してくださいよ。」といった意味合いになります。若干、それでなぜ受理してもらえるのか理解に苦しむところもありますが、実務上はやるべきことは全てやってそれでも証明書を発行することができなければ権利証コピーを補てん資料として添付することで登記申請を受理してもらうことになります。
この手続き方法については、司法書士であれば誰でも知っているはずです。しかし、あまりインターネットでは書かれていない方法です。理由としては、この登記申請方法で受理してもらえるかどうかは法務局の裁量の部分に影響されてしまうため、この方法を使ったとしても確実に受理してもらえるのかどうかはわからないからかと思います。
少なくとも、神奈川県内や東京・千葉・埼玉では、おおよそこの手続き方法を使って相続登記を完成させることができていますが、他の地域ではどういった方法を使われているのかまではわかりません。
地域性であったり、各法務局ごとの考え方によって左右されますので、証明書が全て揃わない場合には、証明書が全て揃わない理由(破棄や焼失など)を法務局の方へ相談をして、その代用方法を確認されることをお勧め致します。

 

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・司法書士よしだ法務事務所 代表
​・行政書士法人よしだ法務事務所 代表
・NPO法人よこはま相続センター 理事
・一般社団法人相続の窓口 事務長

「開業当初より相続分野に積極的に取り組んでおります。遺産承継業務や遺言執行といった財産管理を得意としております。相続のことならお任せください!」
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司法書士、簡易訴訟代理権認定、行政書士、ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引主任者、他多数

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